大阪高等裁判所 昭和54年(ラ)358号 決定
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【判旨】
抗告人は、相手方による本件不動産引渡命令の申立に著しい遅滞があり、右申立は却下を免れ得ない旨主張する。
(一) 一件記録によれば、相手方に対する本件競落許可決定は昭和五三年二月二七日に言渡されたこと、本件代金納付期日が同日七月二七日と指定されたこと、相手方が右指定期日に本件納付代金の全てを納付したこと、本件競売代金の交付が同年八月九日完了したこと、本件不動産引渡命令の申立が昭和五四年三月二八日原審裁判所になされたこと、が認められる。
(二) 不動産引渡命令は、競売手続に付随した手続をもつて、当該執行記録を利用して、簡易迅速な審理方法により、競落人に速やかに競落の効果である占有を得させんとする制度であり、右の如き制度の趣旨目的からみて、不動産引渡命令の申立は、競売代金の支払い後相当の期間内になされねばならない、というべきである。
しかしながら、外形上、不動産引渡命令の申立が遅滞していても、右代金支払いと右申立との間に、右遅滞を正当ならしめる特段の事情がある場合には、右事情は、右相当の期間の判断に当り、考慮される、と解するのが相当である。
(三) これを本件についてみるに、本件競売代金の支払いおよび本件不動産引渡命令申立の各時期については、右認定のとおりであるところ、相手方が、昭和五三年八月頃、抗告人の懇請を容れ、昭和五四年二月までの約で、本件家屋の引渡を猶予したこと、は前叙認定のとおりである。
加えるに、一件記録によれば、相手方は、当初、抗告人が昭和五四年二月には円満に本件家屋を引渡すものと信じ、右引渡の猶予をしたこと、しかるに、抗告人は、右期限が到来しても、右約定に応ぜず、引続き右引渡の猶予を求め、相手方の再三にわたる引渡要求に応じないこと、そのため、相手方において、やむなく、本件不動産引渡命令の申立におよんだこと、が窺える。
右認定事実を総合すると、相手方が、本件競売代金支払い後直ちに本件不動産引渡命令の申立をせず、前叙時期に至り、右申立におよんだのは、やむを得なかつたと認めるほかなく、本件には、前叙特段の事情が存在するというべきである。そして、右特別事情を考慮すると、相手方の本件不動産引渡命令の申立は、相当というほかない。
右認定説示に反する、抗告人の、この点に関する主張は、全て理由がなく、採用できない。
(大野千里 岩川清 鳥飼英助)
〔抗告の趣旨〕
予備的抗弁として引渡命令申立の時期の怠過を主張しておく。
引渡命令の性質を執行方法と解するか、債務名義と解するかは問題としても引渡命令が競落手続に附随した手続をもつてこの執行記録を利用して、簡単迅速な審理方法により競落人にすみやかに競落の効果である占有を得させんとする制度であることは争いがない。
したがつて原則として競売手続の完了までに申立らるべきであり(競売事件が既済事件となるから)、すくなくとも代金支払い後相当の期間内に申立られねばならないことは一貫した裁判例である。
本申立は競落人である相手方に著るしい遅滞があり、引渡し命令による引渡しの利益を放棄したものとして却下さるべきものであると考える。